タイルは、規格化された建材である以前に、土を練り、窯で焼き上げて生まれる「焼きもの」です。
粘土は乾くほどに縮み、窯の炎は、当たり方によって釉薬に違う色を映します。だからこそ、一枚一枚にはわずかな個性が宿ります

今回は、タイルの寸法差や色ムラがなぜ生まれるのかを紐解きます。理由を知れば、現場でのちょっとした行き違いを防げるだけでなく、届いた一枚一枚の違いを、魅力として感じていただけるはずです。

寸法差はなぜ生まれる?  —  土という素材が持つ「縮み」の性質

その個性は、まず「寸法」に現れます。土という天然素材は、乾燥や焼成の過程で水分を失うたびに縮み、その縮み方には、目には見えないわずかなブレが伴います。

■ 成形方法ごとの寸法差

原料を成形したタイルは、乾燥で水分が抜け、窯で焼き締められることでさらに収縮します。土という天然素材が持つ密度や湿度のわずかなブレ、窯の中での熱の伝わり方の違いによって「縮み方のムラ」が生じるため、どうしても1枚ごとにわずかな寸法差が生まれます
また、この収縮は成形方法や、素地に含まれる水分量によっても大きく異なります。

  • 〇  乾式製法(プレス成形):ほぼ乾燥した粉末状(乾燥原料)を高圧プレス機でギュッと固めて成形します。水分量が非常に少ないため、乾燥・焼成による「焼き縮み」が小さく、寸法のバラツキが抑えられて寸法精度が高くなります。

  • 〇  湿式製法(押し出し成形):水分を含ませた粘土状の原料を、ところてんのように金型から押し出して成形します。水分量が多いため、焼成過程での「焼き縮み」が大きくなります。

  • 乾式プレス成形の様子

  • 湿式押出成形の様子

■ 磁器質・せっ器質・陶器質の違い

タイルの素地は、吸水率によって「磁器質」「せっ器質」「陶器質」の3種類に分類されています。吸水率が低いタイルほど、焼成時の「焼き縮み」が大きくなるため、寸法差にも影響を与えます。

  • 〇  磁器質:吸水率3.0%以下。1200℃以上という高温で焼き締められた、緻密で硬質な素地です。吸水性が低いため、外装・水回りなど幅広い用途に使われます。

  • 〇  せっ器質:磁器質と陶器質の中間の性質を持ち、自然な風合いを残しつつ、一定の強度も備えています。

  • 〇  陶器質:吸水率が最も高く、内装壁を中心に使われる素地です。焼成温度が他の2つより低いため、土本来の風合いや温かみのあるテクスチャを表現することが可能です。

ただし、2014年6月のJIS規格(A 5209)改正により、「Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類」という区分に変わりました。おおよそⅠ類が磁器質、Ⅱ類がせっ器質、Ⅲ類が陶器質に相当するとされていますが、測定方法自体が異なるため、旧分類と完全に一致するわけではありません。

成形方法 Ⅰ類 Ⅱ類 Ⅲ類
吸水率:3%以下 吸水率:10%以下 吸水率:50%以下
押出し成形 (A) AI AII AIII
プレス成形 (B) BI BII BIII

規格上の表記は新しくなりましたが、実際の建築現場やカタログでは今も「磁器質」「せっ器質」「陶器質」という呼び方が、性質を直感的に理解しやすい分類として広く使われています。

施工場所ごとの適したタイル選びや、色幅の考え方について、より詳しくは製品仕様ページでもご案内しています。

色ムラはなぜ生まれる?  —  窯の中の炎が描く、一枚ごとの表情

寸法差と同じく、タイルに現れる「色ムラ」もまた、窯で焼き上げる過程で生じる自然な個体差です。同じ釉薬を使い、同じ窯で焼いていても、一枚一枚の色合いが一色に揃わないのには明確な理由があります。

■ 窯内の位置による「熱ムラ」

成形されたタイルは、窯の中に何段も積まれ、長い窯の中をゆっくり移動しながら焼き上げられます。どれだけ最新の工業窯であっても、窯内の「上部と下部」「中央と端」では、熱の対流や炎の当たり方にわずかな偏り(熱ムラ)が生じます。

この温度や熱量のわずかな差が、釉薬の発色や素地の焼き締まりに直接影響し、一枚ごとの色の濃淡(色幅)となって表れます。

  • タイルを載せた「さや」を積み重ねて焼成します。

  • 窯の形状などによって、炎の当たり方が異なります。

■ 焼成方法による色の違い

焼成時の「酸素の量」によっても、色の現れ方は大きく変わります。

  • 〇  酸化焼成:十分な酸素を供給しながら焼き上げる方法。燃焼が安定するため色ムラが出にくく、比較的均一な発色を得やすいのが特徴です。

  • 〇  還元焼成:あえて酸素の供給を制限し、不完全燃焼の状態で焼き上げる方法。不足した酸素を補おうと炎が素地や釉薬の金属成分から酸素を奪うため、独特の深みや複雑な色のグラデーションが生まれます。

窯の中を巡る酸素量によって、同じ釉薬でも、違う表情が生まれるのです。特に還元焼成のタイルは、炎の揺らぎがそのまま色の出方に表れる、その偶発性が魅力です。

■ 炎が生む、一枚だけの表情

日本の陶芸文化には、焼成中に生じる予期せぬ色の変化を「景色(けしき)」と呼び、慈しんできた歴史があります。タイルに現れる色ムラもまた、同じ土と炎が生み出す、その一枚だけの景色なのかもしれません。

  • 施釉タイルの色幅。形状によっても、色の出方が異なります。
    使用タイル:雅趣(GS-127 / GS-67)

  • 無釉タイルの色幅。同じ土から豊かな表情が生まれます。
    使用タイル:ももやま(MY-5)

まとめ

色ムラや寸法差は、タイルが土と炎から作られる「焼きもの」である以上、避けることのできない個体差です。しかし、そのわずかな揺らぎこそが、量産品には再現できない空間の奥行きや味わいを生み出してくれます。

現場での施工トラブルを防ぎ、タイルの魅力を最大限に活かすためのポイントを改めて整理します。

  • 〇  寸法精度への対応:乾式・湿式などの製法や素地の違いによる焼き縮みの差を理解し、適切な目地幅の設定やカリバー(サイズ区分)の確認を行う。

  • 〇  色ムラ・ロット差への対応:窯内の熱ムラや焼成方法による色幅を考慮し、同じ空間に施工する分は必ず「同一ロット・一括手配」で手配する。

均一さを求められる工業製品としての側面と、一点ものの表情を持つ焼きものとしての側面。この両方の特性を理解して設計・施工に活かすことで、届いた一枚一枚の表情が映える、魅力的な空間づくりが叶います。

寸法精度や色ムラについて、ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。

なお、実物の色幅・質感をまずご確認になりたい場合は、サンプル請求ページからもお申し込みいただけます。